大判例

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東京地方裁判所 昭和60年(特わ)1492号 判決

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社コトブキコーポを罰金二〇〇〇万円に処する。

被告人イリー・ジャミール・カッターを懲役一〇月に処する。

被告人イリー・ジャミール・カッターに対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社コトブキコーポ(以下被告会社という)は、東京都渋谷区宇田川町一六番八号に本店を置き、家庭用電気製品等の輸出入を目的とする資本金一〇〇万円(その後増資により昭和五九年一二月二〇日以降の資本金は九〇〇万円)の株式会社であり、被告人イリー・ジャミール・カッターは、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人カッターは、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、架空のコミッションを計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五五年八月一日から同五六年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四九七九万四一三六円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五六年九月二九日、東京都渋谷区宇田川町一番三号所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が三八三万四二三二円で納付すべき税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六〇年押第九七〇号の1)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一九二六万五六〇〇円(別紙(三)ほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和五六年八月一日から同五七年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億五八九九万三一九〇円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五七年九月二九日前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一一九三万一二四八円でこれに対する法人税額が三五六万〇一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の有事業年度における正規の法人税額六五三二万六一〇〇円と右申告税額との差額六一七六万六〇〇〇円(別紙(三)ほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の(1)当公判廷における供述

(2)検察官に対する供述調書六通

一  山下順子、山下貴世子、山口定次郎(三通)及び大谷舜三の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏作成の次の調査書

(1)  商品総売上高調査書

(2)  仕入調査書

(3)  銀行手数料調査書

(4)  支払コミッション調査書

(5)  福利厚生費調査書

(6)  旅費交通費調査書

(7)  通信費調査書

(8)  交際接待費調査書

(9)  雑費調査書

(10)  受取利息調査書

(11)  雑収入調査書

(12)  交際費損金不算入額調査書

一  渋谷税務署長作成の証明書

一  登記官作成の会社登記簿謄本及び閉鎖(役員欄)登記簿謄本

一  押収してある法人税確定申告書二袋(昭和六〇年押第九七〇号の1、2)

判示第二の事実につき

一  収税官吏作成の次の調査書

(1)  売上値引調査書

(2)  広告宣伝費調査書

(3)  事業税認定損調査書

(4)  為替差益調査書

(5)  海外市場開拓準備金繰入調査書

(6)  価格変動準備金繰入調査書

(7)  貸倒引当金繰入限度超過額調査書

(8)  価格変動準備金の積立超過額調査書

(9)  債務免除益調査書

(10)  繰越欠損金の当期控除額調査書

(法令の適用)

法律に照らすと、被告会社の判示各所為は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、情状により一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪につき定める罰金の合算額で処断し、被告人カッターの判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をしたうえ被告会社を罰金二〇〇〇万円に、被告人を懲役一〇月にそれぞれ処し、後記情状を考慮し、被告人に対し同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

(量刑の事情)

本件は、日本の家庭用電気製品・雑貨類等をレバノンを中心とする中近東地域に輸出することを主たる業務とする被告会社において、被告人カッターが、被告会社の業務に関し判示の如き不正の行為により二期分合計で八一〇〇万円余の法人税を免れたという事案であり、その税ほ脱率は昭和五六年七月期において一〇〇パーセント同五七年七月期においても九四パーセントを超えており、同被告人の納税意識は極めて低いといわなければならない。

被告人は、昭和四〇年代にレバノンの戦禍を逃れて来日し、貿易業務に携わるようになり、同五三年八月に被告会社を設立し、その業務を統括していたが、被告会社の取引先が主として政情の不安定なレバノン及びその周辺地域であるため、会社の将来にも不安感があり、また仕入先である大手の電気製品販売会社等から早期の代金決済を要求される反面、銀行の借入条件が厳しい等の事情から運転資金等を蓄積しようと考えて本件犯行に及んだものと認められるが、被告会社の性格上わが国における業務の遂行に関し右のような障害の存することは理解できるとしても、それだからといって本件の如き多額の脱税を行うことが不当であることは多言を要しない。本件各犯行の手段・方法をみると、海外取引における売上除外、支払コミッションの架空計上、雑収入の除外等多岐にわたっており、しかもそのすべてを被告人じしんがそのつど経理担当者に指示して隠匿工作を行わせたものであり、その犯情は軽視し難いものがある。

しかし、被告人は政情不安な祖国を逃れて来日し、日本人と結婚し、わが国に永住する意思をもち、わが国の社会に同化しようと努めており、わが国の法を誠実に遵守して貿易業務に携わる決意をしていること、本件犯行については捜査・公判を通じて一貫してそのすべてを認め改悛していること、本件による脱税額については、国税及び地方税の本税はすべて納付済みであり、延滞税の一部及び重加算税は未納であるものの、近い将来において完納することを確約していること、被告人に前科前歴がないことなど斟酌すべき事情も存するので、被告人に対し刑の執行を猶予するのが相当であると認め、主文の刑を量定した。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑、被告会社につき罰金二六〇〇万円、被告人につき懲役一年)

出席検察官 上田勇夫

弁護人 鶴田岬

(裁判官 小泉祐康)

別紙(一) 修正損益計算書

(株)コトブキ・コーポ

自 昭和55年8月1日

至 昭和56年7月31日

No.1

<省略>

別紙(二) 修正損益計算書

(株)コトブキ・コーポ

自 昭和56年8月1日

至 昭和57年7月31日

No.1

<省略>

別紙(二) 修正損益計算書

(株)コトブキ・コーポ

自 昭和56年8月1日

至 昭和57年7月31日

No.2

<省略>

別紙(三)

ほ脱税額計算書(単位 円)

会社名(株)コトブキ・コーポ

( )自 昭和55年8月1日

至 昭和56年7月31日

<省略>

( )自 昭和56年8月1日

至 昭和57年7月31日

<省略>

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